恒川光太郎「夜市」★★★★★
表題作の「夜市」と「風の古道」の2つの中編が収められている。どちらも異界に迷い込んだ人間を描いていて、ホラーというより暗めのファンタジーだが、それは表向きで、私たちの何事もなく暮らす生活に隠されたメタファーのような気がする。もといた場所に帰ることに何の心配もしていない毎日。しかし、もどれないかどうかわからなくなったら、人間って、どうするのだろう。生きていくことの原型、生の姿が加工されることなく、どかんと目の前にさらけ出されたようで、静謐な中に生きていることの負の部分、切なさ、怖さがいやおうなく迫ってくる。
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